調剤基本料に見合う価値

私が自分の処方せんを持って薬をもらいにいくとしたら、絶対にうちの薬局は選ばない。それは基本料が高いからだ。調剤基本料1(42点)+後発医薬品調剤体制加算3(30点)+地域支援体制加算2(47点)+連携強化加算(2点)=121点、つまり1210円分(自己負担割合が3割ならば約360円分)を算定している。これは今の調剤報酬に基づいて算定できる基本料としては一番高額になる組み合わせだ。はてして、この高い基本料を払ってまで、うちの薬局を選ぶだけの価値はあるのか。

調剤基本料は月の処方せん受付回数や集中率によって決まる。受付回数が少なく、集中率が低い薬局は点数が高い。そして、店舗数の多い大規模チェーンは点数が低くなるように設定されている。

受付回数が少ないということは利用者数が少ない、すなわち混んでいないということだ。その分、待ち時間が少なくてすむ可能性が高い。

また、集中率が低いというのは特定の医療機関だけに限らず幅広く処方せんを応需しているということ。在庫している薬の種類が多いので、処方された薬が用意できないような事態になりにくい。

大規模チェーンよりも中小薬局が優遇される点数設定は正直解せない。チェーン店つぶしといわれても仕方がないと思う。強いて中小薬局のメリットを挙げるとすると、薬剤師を含めたスタッフの入れ替わりが少ないことだろうか。

後発医薬品調剤体制加算はその薬局で調剤した薬のうちの後発品の使用割合によって決まる。使用割合が高いほど点数も高い。薬局として条件を満たしていれば算定できるものなので、後発品を調剤しない処方せんに対しても算定される。

地域支援体制加算の算定要件は複雑だ。麻薬の取り扱いがあるだとか、在宅薬剤管理の実績があるだとか、かかりつけ薬剤師指導料の届出をしているだとかのいくつかの条件を満たす必要がある。この加算を算定しているということは、地域医療に貢献する体制が整っていることを意味する。さらに、災害や新興感染症の発生時等に対応可能な体制を確保している薬局は連携強化加算も算定できる。

問題はこの体制の整備によって恩恵を受ける利用者がどのくらいいるのかだ。薬局の利用者は手厚いフォローが必要な患者ばかりではない。多くの利用者にとってメリットの乏しい地域支援体制の整備によって、その薬局の利用者は一律に地域支援体制加算を算定されるのだ。

私が自分の処方せんのために薬局を利用する場合には、地域支援体制加算を算定していない薬局を選ぶ。では、うちの薬局を利用してくれている患者さんたちは、なぜ地域支援体制加算を算定している薬局を選んだのか。おそらくほとんどが「クリニックの横だから」か「家から近い」という理由だろう。

この患者さんたちに、もっと基本料が安い薬局が近隣にあるのだと伝えたら、どうなるだろうか。その薬局に乗り換える患者さんも当然出てくるだろう。あるいは「しっかりフォローしてもらいたいからこっちにする」「基本料が多少高かろうが近いところがいい」といって、そのままうちを利用してくれる患者さんもいるかもしれない。

大切なのはその価値を分かった上で選んでもらうことだ。そのために薬局は調剤報酬についてもっと知らせていかなければならない。現状では薬局内に掲示はしていても、他の大量の掲示物に紛れてだれも見ていやしない。処方せんの内容によって点数が変動する部分は仕方がないにしても、せめて固定費にあたる基本料については処方せんの受け付け前に伝えて、利用者に選択肢があることを示す必要があるのではないだろうか。